2008年05月02日

最近読んだ本

 相変わらず読書はしているが、どういうわけか頭の中にさっぱり入ってこない日々が続いている。が面白い本もあったので、何回かに分けていくつかご紹介したい。

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 「アースダイバー」 中沢新一 (講談社 ISBN4-06-212851-9)

 東京、特に23区内を歩いていると、渋谷はもちろん四谷に千駄ヶ谷、茗荷谷、青山、赤坂に神楽坂といった地名の通り、思った以上に山や坂、谷や川が多いことに気づく。これは現代の東京の地図の上に、遥か1万年前の洪積層(かつてから地上である、乾いた場所)と沖積層(かつて水中にあった、湿った土地)を重ね合わせ、古墳や神社・寺を記し、さらに縄文・弥生時代の集落の跡や貝塚などを加えた「アースダイビングマップ」を片手に、著者が東京の街を歩き、思考した本。かなりトンデモな意見も飛び出し、賛否両論ありそうだが、これを読めば渋谷や新宿、六本木、秋葉原といった街がなぜ今のような独特の繁栄があるのか、皇居や東京タワーがなぜあの場所にあるのか、ということが朧げに見えてくる。なるほど、普段我々が何気なく歩いている街も、一枚アスファルトをはがせば太古の時代と繋がっていて、それを意識すればそこに暮らす人の意識(無意識も含めて)も今より変わるはずだ。今後の東京散歩に深みを与える、という意味で大いに参考になった一冊。
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2007年12月23日

宮脇俊三さんのこと(最近読んだ本)

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 昨年くらいから、宮脇俊三さんの本を新刊・古本問わず買い集めては読んでいる。宮脇俊三さんと言えば、私が小学生の頃、国鉄全路線を完全乗車したことを記録した処女作「時刻表二万キロ」が好評を博し、国鉄のキャンペーン「いい旅チャレンジ20000km」につながったことくらいは当時から記憶していたが、その後は鉄道に興味を失っていたので、著作を読むのは初めてである。

 一通り読んで思ったのは、この人の一生そのものが鉄道と共にあったのではないか、ということ。大正15年に生まれ、幼少期から大の鉄道好き。青年期「みだりに旅行はしないように」とのお触れがあった第二次大戦中も政治家だった父に付いて日本中をまわり、玉音放送を聞いたのも米坂線の今泉駅だという。戦後中央公論社に入社してからも暇さえあれば鉄道旅行に出かけた壮年期はまさに国鉄の黄金時代であり、完乗を終え作家として遅いデビューを果たした中年期は、飛行機や自家用車の台頭で乗車率も下り坂、しかし国鉄は最後の踏ん張りを見せていた時期であり、そして国鉄の民営化に伴い、相次ぐ路線廃止や第三セクター化などで衰退の一途を辿った老年期。こうして見ると自身の人生と鉄道の歴史が見事に符合していて、そういった意味でも非常に恵まれた、幸せな人だなと思う。

 また時刻表マニアを自称し、車両の形式などには興味がないと認めているせいか、いわゆる「オタク」にありがちな専門用語や車両の形式を自慢気に語るような文章が微塵もなく、むしろマニアの滑稽さを飄々と描くことで、単なる鉄道紀行文の枠を超え、鉄道ファンのみならず一般の人たちにも受け入れられたのも頷ける。残念ながら私の大好きな昭和の黄金時代の鉄道、特にローカル線などに乗ることはほとんど叶わないが、せめてこの人の本を読んで往事に思いを馳せることにしよう。
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2007年12月03日

ラブユー大阪(最近読んだ本)

 ブログの更新は頻繁ではなくなっているが、相変わらず会社の行き帰りなどで本は読んでいる。

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 @「まぼろしの大阪」 坪内祐三 (ぴあ ISBN4-8356-0963-8)
 A「大阪おもい」 坪内祐三 (ぴあ ISBN978-4-8356-1678-0)
 B「夫婦善哉 完全版」 織田作之助 (雄松堂 ISBN978-4-8419-0467-3)

 神奈川に生まれ育ち、東京に暮らす私は、大阪には縁があるとは言えない。しかしたまに出張や遊びで出かける大阪は、良い意味で町並みも人間も東京より古い感じがして、とても居心地がいい大好きな街である。もちろんそこに暮らしてみれば嫌なところも見えてくるのだろうが、関西の情報誌「Meets Regional」を10年近く愛読していた私には、行ってみたい場所、食べてみたいものがたくさんある魅力溢れる街に見えるのだ。

 @、Aはこちらも東京で生まれ育った坪ちゃんが「関西版ぴあ」に連載していたコラムをまとめたもの。筆者がイメージする大阪を「まぼろし」として、21世紀の大阪を、あくまでも東京人の立場で書いていて、一風変わった大阪ガイドとして面白く読むことができた。もちろん文芸評論家なので宇野浩二や織田作之助といった作家たちも文中にたくさん登場するのだが、中でも上司小剣(かみつかさ しょうけん)という作家にとても興味を持った。残念ながら現在出版されている作品はないようなので、古本屋などで探すことにしよう。

 そしてBは大阪続きで読んだ本で、ご存知織田作の代表作。近年幻といわれた続編が発見され、このたび正編と合わせた完全版として出版された。化粧問屋の息子柳吉と芸者の蝶子の苦難に満ちた波瀾万丈の物語は、もちろん柳吉の放蕩っぷりなどをバカにすることは容易い。しかし、芸者と駆け落ちし勘当された「ぼんち」の悲哀や、そんな柳吉を折檻しながらも離れることができない蝶子の強さと弱さ、そして慈悲深さは、恐らく20代の自分では感じ取ることができなかっただろう。また、この時代の市井に生きる人々や当時の風俗が瑞々しく描かれており、食べ物屋などはいくつか現存しているところもあるようなので、今度大阪に行く機会があればぜひ食べてみたい。もちろん、織田作と言えば…の「自由軒」のカレーライスもね。あー、近いうちに大阪行こうかなぁ。
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2007年07月01日

最近読んだ本

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@「「洋酒天国」とその時代」 小玉武 (筑摩書房 ISBN978-4-480-81827-0)
A「やってみなはれ みとくんなはれ」 山口瞳 開高健 (新潮文庫 ISBN4-10-111134-0)

 寿屋(現サントリー)が昭和31年からおよそ10年に渡って発行した「洋酒天国」は、開高健、山口瞳、柳原良平といった才人たちが作った伝説のPR誌。これはトリスバーでノベルティとして配布されるために創刊された雑誌であり、つまりフリーペーパーである。その編集方針とは、「コマーシャル色は徹底的に排除し、香水、西洋骨董、随筆、オツマミ、その他、寿屋製品を除く森羅万象にわたって取材し、下部構造から上部構造、委細にわたらざるはなく、面白くてタメになり、博識とプレイを兼ね、大出版社の雑誌の盲点と裏をつくことに全力を挙げる」(「日々新たに サントリー百年誌」)こと。また編集者たちは自分たちのPR誌のことを、「夜の岩波文庫」と読んでいたらしい。何ともワクワクさせるポリシーである。さて@は、開高、山口、柳原といった編集者のほか、当時の寿屋専務であり、後のサントリー社長で「洋酒天国」の名付け親でもある佐治敬三、そして連載を持っていた植草甚一、薩摩治郎八、埴谷雄高、山本周五郎といった「洋酒天国」周辺の人々を丁寧に追った一冊。読後感じたのは、寿屋という会社の何ともいえないユニークさ、そして人間臭さである。惜しむらくは、坂根進や酒井睦雄といった編集のバイプレーヤーにほとんど触れられていないこと。もし次があるならば、この辺りにも触れていただきたい。

 そしてAは、サントリー創設70周年を記念して作られた社史で、寿屋創立から戦前までを山口瞳、そして戦後から70周年に至るまでを開高健が書いている。やはりどことなく山口は私小説風、開高はドキュメンタリー風なのだが、ユーモアのセンスは流石で、時々クスクスと笑わせてくれる。創始者の鳥井信治郎は、赤玉ポートワインで莫大な利益を得ながら、日本初のウィスキー製造に取り組み、大変な努力と苦労を重ねたわけで、社史となれば神様のように扱うのが常であろうが、著者である二人は、アイディアマン、ブレンダー、信心深く情に厚い、そして変わり者としての鳥井信治郎も余すところなく捕らえていて、この人物に奥行きを与えることに成功している。サントリーという企業のユニークさは、鳥井信治郎の生き方そのものなのだ。そして鳥井の口癖である「やってみなはれ」の精神はそのままサントリーの社是となり、ビールの製造に取り組んだ二代目、佐治敬三にも引き継がれる。ところで、この社風は今でも続いているのだろうか、と思うが、巻末に載せられたサントリー社員の一文を読むと、創立100周年となった1999年には社員5000人を大阪城ホールに集め、大宴会をやったらしい。いやはや、何とも羨ましい会社である。
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2006年11月13日

最近読んだ本

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 @「坊ちゃん」 夏目漱石 (新潮文庫 ISBN4-10-101003-X)
 A「うらなり」 小林信彦 (文藝春秋 ISBN4-16-324950-8)

 @は言わずと知れた日本を代表する文豪の代表作。私は漱石の熱心な読者というわけではないが、文章の歯切れが良さがどの作品にも共通していて実に心地よい。さらにこの作品は語り部である坊ちゃんの性格ゆえか、ウジウジと考えたり迷ったりすることがないので、とても読みやすく分かりやすい。子供から大人まで楽しめ、かつ普遍性を持ち合わせる小説というのは実はそう多くないが、さすが、の一言である。

 Aはその「坊ちゃん」に出てくる英語教師で、地味ながら「坊ちゃん」の中で坊ちゃんと山嵐の運命を左右する、かなり重要なキャラクターであるうらなりのお話。「坊ちゃん」のあっけらかんとしたストーリー展開に対して、こちらはもっとじっくりと、暗い語り口で進んでいく。国民的な作品の続編を、しかも主人公以外の視点で描いているのは簡単なようで実に難しい作業だと思うが、著者は漱石が、そして読者である我々がイメージした個々のキャラクターを殺すことなく巧みに描いている。もちろんこの作品だけでも楽しめるが、@と続けて読むことで面白さはさらに倍増したので、未見の方にぜひオススメしたい。
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2006年11月07日

最近読んだ本。

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 @「「街的」ということ お好み焼き屋は街の学校だ」 江弘毅 (講談社現代新書 ISBN4-06-149856-8)
 A「昭和出版残侠伝」 嵐山光三郎 (筑摩書房 ISBN4-480-81481-7)

 私は川崎生まれの横浜育ち、現在東京在住という、いわゆる関東人なのだが、関西の情報誌(という言い方は失礼かも知れない)「ミーツ・リージョナル」の10年来の愛読者であった。流行のスポットや食べ物を単純にカタログ的に並べ、ここに行けそれを見ろあれを食べろこれを買え、と読者を煽るだけの底の浅い他の雑誌と違って、地に足の着いた取材と、そして編集者たちの「思い込み」が絶妙な、実に面白い雑誌なのだ。@はその「ミーツ」の編集長を10年以上務めた著者による、いわば「ミーツ」の編集方針とも取れる本で、街を歩く、知ることで見えてくるもの、広がりといったものが、とても分かりやすく書かれている。自分が昔から常々感じてはいるものの、上手く言葉にできなかったことについてズバッと書いてくれていて、ページをめくるたびに「そうそう、そうなんだよ」と膝を叩くことしきり。と同時に、「ミーツ」読者の頃は、東京版「ミーツ」創刊を心から臨んでいた私だが、これを読むと、街並もショップも食べ物の味も均一化され、変化のない関東では無理だということを痛感した。

 一方Aは、1981年に月刊「太陽」の名物編集者だった著者が、経営の傾いた平凡社をリストラされた恩師ババボス(馬場一郎氏)とともに辞職し、同じく会社を辞めた仲間とともに「青人社」という出版社を作り、雑誌「ドリブ」を創刊、そして馬場氏の死までを実録としてまとめたもの。タイトルに「残侠伝」とあるように、この仲間たちのつながりは、まるで兄弟杯を交わしたヤクザのように濃い。そしてその仲間たちと一緒にモノ(雑誌)を創り上げるときの、熱狂のようなものが伝わってくる。自分は何が造れるわけではないが、一度はその熱狂のようなものを味わってみたい。大いに刺激になった。
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2006年10月02日

最近読んだ本

 買うだけではない。ちゃんと読んでます。

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 @「テレビの黄金時代」 小林信彦 (文藝春秋 ISBN4-16-359020-X)
 A「ちんちん電車」 獅子文六 (河出文庫 ISBN4-309-40789-7)

 @は以前神保町で見つけた一冊。以前からテレビの黎明期について知りたいと思っていたので、この本はうってつけだった。戦前戦後の映画業界、最近で言えばゲーム業界などもそうだと思うが、テレビ業界もその黎明期には本当に才能のある人物たちが集まり、知恵を絞り、プロデューサー、コント作家、そしてもちろん出演者たちが、大変な情熱を注いで作り上げられていたのだということが良く分かった。また逆説的ではあるが、この本を読むと今のテレビ、特にバラエティーのつまらなさというのが如実に浮かび上がってくる。今のテレビ局など、いい作品を作るよりも、スポンサーの顔色を伺い、視聴率を稼ぐことに精一杯なわけだが、つまりこれは大きくなりすぎたものは動きが愚鈍になるし、何でも簡単に済まそうとしてしまう、ということではないだろうか。もちろん、これは別にテレビ業界に限ったことではないが。

 Aは獅子文六の晩年のエッセイで、廃止寸前で当時でさえもはやレトロ感覚であっただろう都電に対する愛情溢れる作品。幼少のみぎりから慶応義塾の寄宿舎で育った生粋の町っ子である著者が、品川から上野、そして浅草まで、ちんちん電車に揺られながらかつての街並み、懐かしい味などを綴る。ただしその文体は、消え行くものへの追悼というよりは、とても生き生きと書いているので、変にしみったれていないところがいい。ところで、以前は邪魔者扱いされ、次々と廃止に追いやられた路面電車が、最近、特にエコロジカルな面で見直され、何でも池袋辺りで復活が検討されているらしいが、この事実を著者はどう思うのだろうか。一度無くならないとそのありがたみが分からないなんて、何だか情けない話しである。
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2006年09月06日

最近読んだ本

 それは会社でのお昼休みのこと。
 「東京っていつも電車や道路を通すとか言って地面掘り返しているけど、土を運んでいるところってあまり見かけないよなぁ」
 「何でも東京の地下には戦前に造った皇居と軍部、国会といった主要施設を繋ぐ地下ルートがあるらしいよ。それを再利用してるからじゃない?」
 「あぁ昔からあるよね、そんな噂。そういえばそんな本が出てなかったっけ?」
 というわけで会社の友人が以前からちょっと気になっていたこの本を貸してくれた。

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 「帝都東京・隠された地下網の秘密」 秋葉俊 洋泉社

 結論を言うと、題材は面白いのに著者の思い込みの激しさが災いしていて、最後には妄想に至るという、まさにクズ本の典型。著者は過去の資料を数多く紐解いていくが、頭から「東京の地下には必ず何かある」と決めてかかっているので、ちょっとしたひと言に執拗にこだわり、作為的かつ強引な深読みで何とか自分の理論が正しいと証明していく。文中には「〜と思えないだろうか」、「〜に見えないだろうか」といった表現がとても多く、何とか読者も見方につけようと努力するが、私などはどこをどう読めばそう思えるのかがさっぱり理解できなかった。挙句の果てに得た結論が、東京の地下には明治から昭和初期にかけて総距離 400km におよぶ地下網が張り巡らされていて、地下鉄やトロリーカーが走っていたんだそうな。まともな神経を持った人なら噴飯ものであろう。私自身戦前に造られた防空壕や武器庫、そしてそれらと主要施設を結ぶ地下ルートは存在すると思うし、むしろあって当然とも思うが、ここまで荒唐無稽な妄想に付き合えるほどバカではない。おまけに著者は本当にジャーナリストなのかと疑いたくなるくらい文章構成が拙く、同じ話しが何度も出てきたり、時代が飛び飛びで読みづらいことこの上ない。友人に借りた手前途中で読むのをやめるわけにもいかず、読破するまでにかなりの苦行を強いられた。買わずに済んだことだけが幸いである。
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2006年07月28日

最近読んだ本

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「気まぐれ古書店紀行」 岡崎武志 工作舎 (ISBN4-87502-391-X)

 「彷書月刊」(写真左)という雑誌をご存知だろうか? 大型書店に行ってもあまりお目にかかれない、古本と古本屋に関する情報誌で、私も最近知ったのだが、大手の雑誌ではなかなか取り扱わないような地味ながらセンスの光る特集と連載がなかなか楽しい。この「彷書月刊」に8年に渡って連載されている岡崎さんの人気コラムをまとめたのが本書である。私も独身の頃は、今よりもっと真剣に音楽に(リスナーとして)向き合っていたので、週に1回はどこかのレコード屋やCDショップに赴いたり、出張やサッカーをアウェイで観戦した折に地方の中古レコードを訪れたものだが、岡崎さんもレコードと古本と、テーマは違えどやっていることはほぼ同じ。近場はもちろん、雑誌の取材のついでにその土地の古本屋を巡り、時には家族旅行の最中にも家族を巻き込んで古本屋の戸を叩く。基本的には完全に客の立場で古本屋の佇まいや買ったもの、買わなかったもの、買えなかったものが淡々と綴られていくのだが、著者自身がとても楽しんでいるのが伝わり、まるで自分が本当にその古本屋に訪れたかのように感じる。欲しかった本が思わぬ安価で手に入れたときの喜びは、自分がかつてレコードで感じた喜びと同じはずである。この本を読むことで、その宝探しのような興奮が沸々と甦ってきた。来週は夏休みで旅に出るので、ちょうど読書熱も高まっていることだし、岡崎さんのようにはとてもいかないが、ヨメの白い眼を気にしつつ、旅先で気になる古本屋にふらり立ち寄ってみようかと思う。
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2006年07月16日

最近読んだ本

 しつこいようだが、自転車に乗れないので読書は進む。最近読んだのはこの3冊。

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 @「一九七二 「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」」 坪内祐三 文春文庫 (ISBN4-16-767979-5)
 A「同時代も歴史である 一九七九年問題」 坪内祐三 文春新書 (ISBN4-16-660507-0)
 B「若者殺しの時代」 堀井憲一郎 講談社現代新書 (ISBN4-06-149837-1)

 @は買おう買おうと思っているうちに文庫版で登場。ハードカバーにこだわりのない私にとっては嬉しい限りである。戦後から20数年、高度経済成長のさなかにある若者たち、主に全共闘世代の歪みを、政治経済と文学、カルチャーとスポーツ、エンターテイメントを交え、時に自分の記憶と重ね合わせながら縦横無尽に綴っている。この辺は坪ちゃんの真骨頂と言えよう。特に連合赤軍によるあさま山荘事件の、そこに至るまでの経緯を、永田洋子らメンバー自らの手記から緻密に検証していく部分はこの本のハイライトだろう。

 一方Aは、@の連載が終わった後に「諸君!」に連載していた文章をまとめたものであるが、@に比べると内容はエンターテイメント性が少ない真面目なもの。そのせいか全体的にやや論考が貧弱な気がするが、それは多分私の頭の問題であろう。それでも山本夏彦の項などはかなり楽しめた。そうだよ、10代の男は今も昔も「ホルモン」で悩むんだよ(笑)。

 そしてBである。6月27日のエントリーに「戦後日本は得たものは大きいが失ったものも大きい。その原因は薄々分かっている」と敢えて言わないでおいたのだが、この本では現在では当たり前になっている、若者に金を使わせる「仕組み」を作り上げられたのは'80年代からで、その仕掛け人は当時働き盛りであったベビーブーマー、つまり団塊の世代であると明言している。私は自分の10代が丸々80年代だったので、この10年間の奇妙な変化を肌で感じていた。たとえばクリスマスやテレビ、雑誌の広告がいつの間にか若い恋人たちの(特に女性主導な)ものになったこと、オシャレなだけで中身の空虚なトレンディドラマの隆盛にリアルタイムで違和感を覚えていたのだが、この辺りの個人的なモヤモヤがホリイさん得意の偏執狂的な調査で裏付けられていて、大変興味深かった。ホリイさんには、できれば「笑っていいとも!」の「テレフォン・ショッキング」が、いつから本当の「友達の輪」から単なる番宣になったのか、辺りからさらなる'80年代研究をしていただきたい。
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2006年06月30日

最近読んだ本。

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 「時刻表2万キロ」 宮脇俊三 河出文庫

 以前谷根千を散歩したときに古本屋で見つけた本。いわゆる鉄ちゃんのバイブル的存在である。この本が出た頃、私も立派な鉄ちゃん(当時そんな愛称はなかったと思うが)で、後に国鉄の「いい旅チャレンジ 20000km」や青春18(のびのび)きっぷといった企画が登場し、ちょっとした乗りつぶしブームが起こったと記憶している。この本は今でも流通しているが、この辺のタイアップが帯に書かれているのが新刊にはない面白さだ。

 本書には、汽車旅に魅せられた著者が、当時の国鉄路線の全線乗車を完了させるまでの日々が描かれている。鉄道ファンからみれば何とも楽しそうな旅であるが、未乗路線はいわゆるローカル線や盲腸線と呼ばれる運転本数も少なく、乗り継ぎも悪い路線ばかりで苦労も多い。時には電車の遅れで接続がうまくいかなかったり、あるいは寝過ごして駅を通り過ぎてしまったりといった失敗もあるが、十津川警部も真っ青といった具合に時刻表の時間のトリックや地図を巧みに操り、路線を乗りこなしていく姿は痛快ですらある。残念なことに、国鉄が解体し JR となった今ではここに掲載されている路線のほとんどが廃止や第三セクター化してしまい、作品中に出てくる特急や急行も今やほとんど存在しないので、著者の旅を追いかけることはできないが、今年の夏は鉄道に乗って今まで通ったことのない路線に乗ってみようと思う。そんなわけで、時間があれば宮脇さんのように時刻表とにらめっこをしている梅雨時の私なのである。
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2006年06月27日

最近読んだ本

 たまにはサッカー以外の話題を。

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 「東京百話 地の巻」 種村季弘 編 ちくま文庫(ISBN4-480-02102-7)
 「東京百話 人の巻」 種村季弘 編 ちくま文庫(ISBN4-480-02103-5)

 最近色々と都合がつかず自転車に乗れない日々が続いている。通勤電車内ではワールドカップの寝不足をしっかり補っておきたいところだが、ここは長渕剛も死にたいくらいに憧れた花の都大東京、座席に座ることなど不可能に近い。そんなわけでしばらく積ん読状態だった文庫や雑誌を読むことに集中、おかげで読む速度が極めて遅い私でも、この 400 ページ強ある「東京百話」を 2 冊片付けることができた。前回読んだ「天の巻」も十分楽しんだが、東京の街と人をテーマに編まれたこの 2 冊も実に読み応えがあった。この 3 冊に共通しているのは、メジャーな文化、街、人を押さえつつ、マイナーな部分により力を注いでいるところ。たとえば「地の巻」では銀座や浅草、渋谷新宿池袋という新旧の繁華街はもちろん、路地や坂、川、橋など、古き良き東京を語る上では欠かせないようなパーツもテーマとしてしっかり取り上げている。また「人の巻」では古今亭志ん生や岡本一平・かの子・太郎一家などの有名人はほんのわずかで、むしろ名も無き庶民にスポットが当てている。そのどれもが素晴らしい筆致で綴られているが、非常に残念に思うのは、ここに書かれているような場所、人々はもう東京にはないということ。日本は経済的には豊かになったかも知れないが、失ったものはそれ以上に大きい。一体いつからこうなってしまったのか、何が原因なのかは薄々感じているのだが、今はまだ語るべきではないだろう。
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2006年05月23日

最近読んだ本

 相変わらずの天候不順と外出で、自転車通勤がままならない分、電車通勤が増えて読書は進み、痛し痒しといったところだ。

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 「東京百話 天の巻」 種村季弘 編 ちくま文庫(ISBN4-480-02101-9)

 ここのところクォリティの高い本を立て続けに出し、個人的に目が離せない存在になっているちくま文庫から復刊された、大正・昭和の東京について書かれたエッセイや短編を集めたアンソロジー。天・地・人の 3 冊を店頭で見つけるや否や一気買いしましたよ。とりあえず天の巻を読了したが、期待に違わぬ内容で、当時の文化・風俗・食べ物やオカルト、鳥や虫についての名文が、懐かしさを煽ることなく並べられている。編者の種村季弘さんのことは、恥ずかしながら氏の死亡記事で初めて知ったのだが、とても丁寧にこの本を編んだことが分かるし、これだけ面白い本を編める人なら、氏のエッセイも面白くないわけはないだろう。もちろん本書に掲載されている獅子文六、佐多稲子、山本嘉次郎などの本も今後ぜひ読んでみたい。こうやって興味の範囲はどんどんと広がって行くのである。
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2006年03月29日

今日買った本

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「シトロエン 改革への挑戦」(二玄社 ジョン・レイノルズ著 相原俊樹訳 ISBN4-544-40006-6)

 外出先の会社へ向かう途中に寄った本屋で見つけた本。タイトルの通りシトロエンの歴史とその革新性に焦点を当てた一冊で、黎明期のモデルから XM までの各モデルが紹介されている。もちろん 2CV にも多くのページが割かれているので先にこちらを読みたくなるのだが、ここは時代に沿ってゆっくりとページを繰っていくことにしたい。
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2006年03月01日

今読んでいる本

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「Coyote No.8」 (スイッチパブリッシング ISBN4-88418-139-5)

 紀行文が好きである。内田百間(本当は門構えに月)の「阿房列車」、小沢昭一の「小沢昭一的 東海道ちんたら旅」、村上春樹の「遠い太鼓」などお気に入りは色々あるが、最も好きなのはやはり沢木耕太郎の「深夜特急」である。自分も独身のときにはよく一人旅をしたが、独りで異国を旅するときの、この先に何が待っているのかという興奮や不安がないまぜになるあの感覚や、何を目的にするでなく、ただ「漂う」というスタイルに共感を覚えた。そして多くの読者がそうであるように、いつか自分も主人公の青年のような旅をしてみたいと思ったものである。今ではとても叶わないけれど。

 この雑誌はその「深夜特急」に焦点を当てている。沢木氏自身が特集のほとんどを手がけているが、中でもこの旅が始まるまでの経緯、そしてこの旅が作品になるまでを綴った「旅の掌編」というエッセイが秀逸だった。また単行本未収録で「深夜特急」のプロローグ的な作品、「飛光よ!飛光よ! 香港流離彷徨記」も掲載されていて、こちらも興味深く読んだ。まだ特集の半分程度しか読んでいないけれど、読み進むうちに、「深夜特急」を読んだときに感じたあの「熱」のようなものが甦ってきて、私の身体の中にいる旅行虫がまた飛び跳ね始めた。困ったもんである。
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2006年01月24日

最近読んだ本。

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「街場のアメリカ論」内田樹 NTT出版(ISBN4-7571-4119-X)

 贔屓にしている内田さんがアメリカを語る、ということで期待たっぷりで読み始めたのだが、はっきり言って肩透かし。論理を展開するための参考資料があまりにも貧困すぎる。さすがにジェンダーフリーやフェミニズム論争に対する意見は鋭いが、いつも読んでいることなので新鮮さもないし。つまりこれは、私が内田さん、ないしは面白いと思っていた内田さんのスペクタクルで、時にトンデモな論旨に飽きてしまったということか。もうこの人の本はしばらく買わないと思う。
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2005年12月21日

最近読んだ本

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「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」 リリー・フランキー 扶桑社 (ISBN4-594-04966-4)

 発売されてもう半年近く経つが、未だに本屋に平積みされているベストセラー。もともとリリーさんの文章はその簡潔さとユニークさが好きでちょこちょこと読んではいたが、初の長編小説となる本作でもその持ち味は健在。人間関係というのは、テレビドラマにあるような大げさな出来事ではなく、ほんの些細なことを長い時間かけて積み重ねていくことで深まっていくものだと常々思っているのだが、この本のテーマであろう「母と子の絆」もそのようなことばかり。リリーさんの実体験に基づいた数々のエピソードは、本当に細々としたものだが、だからこそこの親子の愛情と言うものが読む側にも伝わるし、ラストが心に響くのである。すでに50万部が売れ、世間では「とにかく泣ける本」みたいな扱いをされているが、メディアミックスとやらで映画、漫画、テレビドラマになり、数百万部を売り上げた、ただ泣かすだけの紙くずみたいなベストセラー本とは本質的に異なることに気づいていただきたい。余計なお世話かも知れないが、高校生どもにはセカチューよりもこちらを勧めたい。
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2005年12月07日

昨日買った本。

 他の妻帯者の方がどうなのかは良く知らないが、私はお小遣い制である。男たるもの給料袋から生活費を取り出し、「今月はコレでヤリクリせいっ!」とヨメに渡してみたいものだが、元来浪費癖が強いのでヨメに管理してもらう今の生活の方が実は良いのかも知れない。幸い朝・昼・晩とヨメが頑張って食事を作ってくれるので食費にはそれほど困らないが、以前にも書いた通り交通費はお小遣いから賄わないといけないので、外出が続いたり自転車通勤が出来なくなると途端にピンチになってしまう。今月はその2つが重なったのと忘年会で、師走も上旬にして我が財政が危険な状況に陥ってしまっている。今月は財布の紐を緩めないようにしないと。と思ったのもつかの間、昨日何気なく入った本屋で物欲を爆発させてしまった。本当はもっと欲しかったのだが、選びに選んで買ったのは以下の5冊。

1. 「Relax」 マガジンハウス
2. 「ユリイカ」 青土社
3. 「誰も寝てはならぬ」 サラ・イネス 講談社 (ISBN4-06-337586-2)
4. 「極私的東京名所案内」 坪内祐三 彷徨舎 (ISBN4-906287-17-4)
5. 「面白半分」 宮武外骨 河出文庫 (ISBN4-309-47289)

 雑誌に文芸誌に漫画にエッセイに文庫。一見とりとめがなさそうだが、坪内さんとサラさんは大好きな物書きだし、宮武外骨は今気になる明治人の一人。ユリイカの特集は野坂昭如で、Relax は温泉。どれも今の私には外せないと思い購入したものばかりなのだが、最近は買ったことで満足してそのまま「積ん読」状態になっているものが多いので、泣けなしの小遣いで買ったこれらの本は近いうちに読まなければ。

 ところで、Relax がいつの間にか右綴じになっている。またリニューアルしたのか? 雑誌はナマモノなので時々新しい風を入れなければいけないのは分かるが、リニューアル後の雑誌というのは大抵勢いを失うものである。Relax も昔はもっと面白かったんだけどなぁ。もうダメなのだろうか。
posted by たけ at 23:59| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月16日

最近読んだ本。

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「ぼくの東京案内(植草甚一スクラップ・ブック19)」 植草甚一 晶文社 (ISBN4-7949-2579-4)

 植草甚一さんの現役を知らない世代にとって、晶文社が過去の著書を完全復刊させてくれるのは嬉しい限り。この「ぼくの東京案内」は、植草さんの視点で今(と言ってももう 30 年以上前)と昔の東京という街について綴ったエッセイをまとめたもの。独特の語り口とリズムで書かれた文章は、時に横道に逸れたり、あっちへフラフラこっちへフラフラしながらのんびりと進んでいく。ああそうか、この人の文章自体が散歩なんだと、読んで納得した。

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「東京の江戸を遊ぶ」 なぎら健壱 ちくま文庫 (ISBN4-480-03595-8)

 こちらも東京関連。もはやかすかにしか残っていない東京に残る江戸文化をなぎらさん自身が訪ね歩くという本で、今後のポタリングのネタに使えそうな話題もたくさん。軽妙な文章はいつも通りだが、東京の下町の風景を愛するが故の今の東京の風景の味気なさに対する苦言はいつもより強め。そういえば、坪内祐三さんも今月の文藝春秋で「今の東京の変化がバブルの時の変化以上に嫌い」と言っていたっけ。まったくもって同感。

 今日紹介したお二人は、ともに時代は異なれど、方や日本橋小網町、此方銀座は木挽町の生まれ。どちらの文章も粋で洒脱で小気味が良い。私はこういった生粋の下町育ちの文章にめっぽう弱いようだ。
posted by たけ at 01:30| 東京 🌁| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月27日

最近読んだ本。

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 「健全な肉体に狂気は宿る - 生きづらさの正体」 内田 樹 春日武彦 共著 (角川 One テーマ21)

 嫌いな言葉は数々あれど、中でも「自分探し」という言葉は 5本指に入るほど大嫌いである。人間なんて色々と悩むことは当たり前だし、失敗や反省を何度も繰り返す。そうしたことを糧にすることで人は成長していくものだろう。ところが「自分探し」はこういった日常を生きていく上での「当たり前の知恵」(=常識)を得ていく過程を、無責任にリセットさせる言葉に思えてならないのだ。メディアから発せられるこんな美辞麗句にだまされている輩を見ると滑稽でしょうがない。「本当の自分」なんてどこにもありゃしないよ。
 本書に書かれていることはこれだけではないが、その他の話題もごくごく当たり前のことである。著者の一人である内田樹さんは、しばしば(特に歴史観などの)意見が異なるが、文章が明瞭だし、おじさん的な視点が好きなので贔屓にしている。本書も多少例えが飛躍しすぎている嫌いがあるが、「内田節」は相変わらずである。
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