2007年07月01日

最近読んだ本

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@「「洋酒天国」とその時代」 小玉武 (筑摩書房 ISBN978-4-480-81827-0)
A「やってみなはれ みとくんなはれ」 山口瞳 開高健 (新潮文庫 ISBN4-10-111134-0)

 寿屋(現サントリー)が昭和31年からおよそ10年に渡って発行した「洋酒天国」は、開高健、山口瞳、柳原良平といった才人たちが作った伝説のPR誌。これはトリスバーでノベルティとして配布されるために創刊された雑誌であり、つまりフリーペーパーである。その編集方針とは、「コマーシャル色は徹底的に排除し、香水、西洋骨董、随筆、オツマミ、その他、寿屋製品を除く森羅万象にわたって取材し、下部構造から上部構造、委細にわたらざるはなく、面白くてタメになり、博識とプレイを兼ね、大出版社の雑誌の盲点と裏をつくことに全力を挙げる」(「日々新たに サントリー百年誌」)こと。また編集者たちは自分たちのPR誌のことを、「夜の岩波文庫」と読んでいたらしい。何ともワクワクさせるポリシーである。さて@は、開高、山口、柳原といった編集者のほか、当時の寿屋専務であり、後のサントリー社長で「洋酒天国」の名付け親でもある佐治敬三、そして連載を持っていた植草甚一、薩摩治郎八、埴谷雄高、山本周五郎といった「洋酒天国」周辺の人々を丁寧に追った一冊。読後感じたのは、寿屋という会社の何ともいえないユニークさ、そして人間臭さである。惜しむらくは、坂根進や酒井睦雄といった編集のバイプレーヤーにほとんど触れられていないこと。もし次があるならば、この辺りにも触れていただきたい。

 そしてAは、サントリー創設70周年を記念して作られた社史で、寿屋創立から戦前までを山口瞳、そして戦後から70周年に至るまでを開高健が書いている。やはりどことなく山口は私小説風、開高はドキュメンタリー風なのだが、ユーモアのセンスは流石で、時々クスクスと笑わせてくれる。創始者の鳥井信治郎は、赤玉ポートワインで莫大な利益を得ながら、日本初のウィスキー製造に取り組み、大変な努力と苦労を重ねたわけで、社史となれば神様のように扱うのが常であろうが、著者である二人は、アイディアマン、ブレンダー、信心深く情に厚い、そして変わり者としての鳥井信治郎も余すところなく捕らえていて、この人物に奥行きを与えることに成功している。サントリーという企業のユニークさは、鳥井信治郎の生き方そのものなのだ。そして鳥井の口癖である「やってみなはれ」の精神はそのままサントリーの社是となり、ビールの製造に取り組んだ二代目、佐治敬三にも引き継がれる。ところで、この社風は今でも続いているのだろうか、と思うが、巻末に載せられたサントリー社員の一文を読むと、創立100周年となった1999年には社員5000人を大阪城ホールに集め、大宴会をやったらしい。いやはや、何とも羨ましい会社である。


posted by たけ at 01:04| 東京 🌁| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久しぶりです・・・
おお、ここは故郷。
瞳さんの男性自身にも私ら家族が出てました。
今は無き文蔵にも飲みに行ったっけ。
Posted by izumi at 2007年07月30日 22:48
>izumiさま
お久しぶりです。そして日本ご帰任おめでとうございます。
えぇぇ!今男性自身を古本屋でコツコツと集めているところです。今度ヒントだけでも教えてください。
文蔵、行こう行こうと思ってはいたのですが…。残念です。
Posted by たけ at 2007年08月04日 21:40
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